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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
を解除し、奴めの胃袋からはじめてアゴも鼻柱も口もミケンも存分に殴ったのである。
ホッと一息、満足して立ち上った歌子は、地上にダラシなくのびている存八の肉体が意外にも逞しいのにおどろいた。刺子の下ではうかがいようもなかったが、昔の存八とはまるでちがう。リュウ/\たる筋骨である。そのはずだ。コブの上にコブ、またまたコブといつしかコブを肉にした存八である。骨にもコブぐらいできたろう。父朝之助を小型にしたような逞しさであった。
思わず、キャッ、と叫びたい気持になった。目をそむけて逃げだした。
彼女は山にいたときのことを思いだした。山では殺気だっていた。しきりに父に打ちかかったあのころは、充分には気がつかなかったが、彼女はたしかに父を打ちふせたいと思っていた。それは剣の上達のため、当然なことだと思っていたのだ。
しかし、存八の父を小型にしたようなリュウ/\たる筋骨を見たとき、一瞬、彼女はそれを父と幻覚した。彼女に打ち倒された父の姿と幻覚した。まるで身体の中心にブッスリと針をさされたような恋心を感じた。朝之助への恋心であった。
歌子は部屋へ逃げてきて、机に向い顔をおおうたのである。