轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おんなけんし

女剣士

坂口 安吾

「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页

青空文庫

世の中に男は父しかいない。父は唯一であり、全ての男だ。父ではあるが、父ではない。師でもある。恋人でもある。まさに全てにして唯一の男だ。

なぜその心を早く知ることができなかったか。存八という俗世のくだらぬ幻にあのころ目を眩ませていたからだ。俗世の約束にとらわれていたのであろう。父をただ父のようにしか見てはならない俗世のくだらぬ約束に。

自分が愚かであったために、全てはもう、すぎ去ったのである。父は娘が恋人になってくれないために、悩みに悩んだあげく、とうとう一物を切りすててしまった。そして全ては取り返すことができなくなった。しかも父は男らしくカラカラと哄笑し、彼女を存八のもとへ返した。あのときのリリしく逞しい巨人のような父の立像。山気に木魂する哄笑。それもこれも自分が愚かであったためだ。その巨人には一物がない。

かえすがえすも憎むべきは存八だ。下司下郎のくせに高慢で、筋骨だけは妙に逞しくなり、しかも一物すらも具備している。不潔なケダモノのような奴だ。

あまりにも呪うべき奴、歌子は顔をおおうた手を放すと、悪鬼の形相で立ち上った。押入の中から家宝の日本刀をとりだしてサヤをはらい、ジッと刃を見つめていたが、ようやく気をとり直して再びサヤにおさめ、その刀をたずさえて庭にでた。