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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
その時だけは妙なグアイに生気があった。食い物を狙う野犬のような生気である。そして実に大飯をくらう。歌子の分がなくなってしまうのだ。
「仙人になって帰ってきたかと思ったら、そうでもないわね」
歌子はウンザリした。これがいったい父朝之助だろうか。父とは何ぞや。剣である。それしかないはずだ。歌子は道場から木刀を二本持ってきた。そして父の食事が終ったとき、その前に一本の木刀をおいた。
「お父さま。一手御教授下さいませ。山中でさだめし秘剣を会得されたのでしょう。それを見せて下さいませ」
しかし父はいかにも食に充ち足りてただもう睡たげに坐っているばかり。木刀を手にとろうともしない。坐ったまま、いまにも睡りこんでしまいそうな様子を隠そうともしないのだ。
「モシ」
歌子はたまりかねて肩をゆすった。なにぶん朝之助は衰えた身体ににわかに大食しているから、消化が不充分だ。そのためにガスがたまっている。尻にシマリがなくなっているから、肩をゆするたびにオナラがプップップップッとでるのである。また、ゆする。プップップッ。面白いように必ずでる。しかも本人は半分ねむりかけているのである。