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にょきゃくいっしゅうかん
女客一週間
豊島 与志雄
「新潮」1931(昭和6)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,724 字 · 26 页
而もそれが、アトリエの次の室だ。島村はよく眉をしかめた。彼女もそれに気がついた。然し、癖はやはり癖だ。
その一寸した癖を除いては、彼女は善良な娘だった。朝は早く起きて、女中たちと一緒に掃除だ。それから勉強的埃払い。夕方は台所の手伝い。それに子供たちの相手。全く小間使の生活だ。ただその小間使は、自由に金を使った。女中たちから小遣をもらっては、子供たちのお三時のために、或は晩の惣菜のために、勝手なものを買いこんでくる。果物や菓子はよいとして、罐詰やソースや肉類を集めて、訳の分らないハイカラなものを拵える。それがみな、食べられないようなまずいものばかりだ。皆がまずいと云う。彼女は笑っている。女中たちも笑っている。馬鹿げた無駄遣いなのだ。然しそうしたつまらないことが、子供たちを喜ばせ、家の中に一脈の色彩を添えるのだ。
その色彩に、最も敏感な立場にあるのは島村だった。彼はアトリエに籠って、自作の女人像に眺め入ることが多かった。それはみな女体を対象としたものだ。女体には特殊な香りがある。彼はそれを捉えようとしている。然し色彩は? それは女性から来るものだ。殊に若い女性から来るものだ。