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にょきゃくいっしゅうかん

女客一週間

豊島 与志雄

「新潮」1931(昭和6)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,724 字 · 26 页

青空文庫

女給としてはむしろ不似合の顔立だ。また客扱いが上手だというんじゃない。むしろ我儘な方だ。それでいて、彼にとっては――どこまでも、彼にとってはだが――初めからの懇意さから、彼女だけが光っていた。懇意とか馴染とかは、おかしな連鎖を人間の間に拵える。その彼女がいなくなれば、コスモスは薄汚い狭いただのバーに過ぎない。彼女の――この女の――存在が、あすこでも何かの価値を持っていたのだ。

「君がいなけりゃ、行ったってつまらないさ。」

「そう。しばらく行かない方がいいわ。」

彼が? 彼女が? どちらともつかない調子だ。そして微笑しながら、彼の顔を珍らしそうに覗きこんで、二日酔ってどんな気持かしら、などと云い出すんだ。――それは、ぼんやり記憶の糸を辿りながら、自分では少しも口を利きたくなく、そのくせ誰か親しい者の話でも聞いていたい気持だ。――そんなら、全然反動的なものね、などと生意気なことを彼女は云う。酒の酔にも反動があるのは面白いなどと。だけど、酔払うと大抵は誰でもやたらに饒舌になるのは、不思議なことだ。殊に先生のはひどい。ふだんは無口でいて、一度酔ったとなると、やたらにべらべら饒舌りだす。