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おんなごうとう

女強盗

菊池 寛

「新大阪新聞」1947(昭和22)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,200 字 · 11 页

青空文庫

時代は分らない。ある失業した侍(貴族に仕える男、後世の侍ではない)が、あった。年は、三十ばかりで、背丈も高く、少し赤ひげであるが立派な男であった。ある日の夕暮、京の町を歩いていると、ある家の半じとみ(小窓)から鼠鳴きをして(浅草の六区や玉の井の女が鼠鳴きして客をよんだが、これは古代からのならわしである)手を指し出してその男をよんだ。男は近づいて(何か御用ですか)と云うと、(ちょっと話したいのです。その戸は閉まっているようですが、押せば開きます。どうぞ開けておはいり下さい)と、云った。男は、思いがけない事だと思ったが、とにかくはいると、女が迎えて(その戸を閉めてから、お上り下さい)と、云ったので上った。上ると、みすの中に引き入れた。昔は、一間の中にみすを垂れて、その中が女の居間であり、閨房であった。さし向いになって見ると、年は二十ばかりで、愛嬌があり美しい女である。この位美しい女に、誘惑された以上、男として手を拱ねていることはないと思ったので、一緒に寝た。割合い広い家なのに、家人は一人もいない。どうした家だろうと、最初は怪しんだ、が、女と親しくなるにつれて、そんな事は気にならないで、日が暮れるのも忘れて寝ていた。