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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

その上、長谷川が来ると、彼はスタンドでバーテンと饒舌っていたが、長谷川を片隅のボックスへ引張りこみ、女給も遠ざけてしまった。

なにか用件があるに違いないし、あるとすれば、恐らく三浦千代乃のことかも知れない。その長谷川の勘は、正しかった。

「君の腕には、さすがに僕も驚いたよ。」

石山は楽しそうに、やはりにやにや笑っていた。

松月館主人から、石山の許へ、不得要領な手紙が来たのである。

「あまり不得要領なものだから、持って来るのも忘れちゃったがね……。」

先般御紹介を忝うした長谷川梧郎様という仁は、どういう御身分の方なのでしょうか、御差支なくば概略御知らせ頂きたく、妹千代乃となにか訳あるらしく察せられるふしもあり、甚だ失礼の至りながら……云々。

石山はそんな風に暗誦した。

「御紹介を忝うした……はよかったね。なにか訳あるらしく……も名文だ。僕は面倒くさいから、ただ葉書一枚、どうせ僕のような小説家の友人だから、それを以て勝手に想像してくれ、よく知らんと、それだけ返事をしておいたが……どうだろう。わるかったら訂正の労を惜しまないがね。」

長谷川はチーズをかじり、ビールを飲んでいたが、石山の前にあるウイスキーの瓶に手を伸し、それをビールにまぜて飲んだ。