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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

然し二人とも、笑いはしなかった。怪談の特質として、たとえそのようなことは信じなくとも、なにか他界の気配に耳を傾けるような、異様な気分になっていった。

すると千代乃は、長谷川の怪談に対抗して、超自然的な異変を持ち出してきた。幽霊やお化は全くの作りごとだが、他にいろいろ不思議なことが実際にあると言う。

親しい友とか身内の者とかが、遠く離れていて死ぬ場合、その人の姿がぼんやりと、枕元に立ち現われる、などという話は嘘だけれど、家の棟に大きな音がしたり、柱が軋り鳴ったりすることは、実際にある。――一家の主人の運命が大きく変転する場合には、その庭の木が、時ならぬ花を咲かせたり、俄に立ち枯れたりすることが、往々ある。――人間の運命と自然現象とは、たいてい気息を通じ合っている。――キリストは、その信仰によって奇蹟を行ったのではなく、逆に、奇蹟に出逢ったことによって、キリストの信仰が大きく展開したのである。

そういう話になると、彼女の肉附きの薄い頬は、酒の酔いもすーっと引くかのように、蒼ざめかげんに緊張し、眼はじっと見据ってくる。

議論の余地はなく、ただ、信ずるか信じないかだけだ。