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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

靴店に見立てたっていい。」

「まあ、失礼ね。それより、袋物の店か、画廊……。」

「鞄の店は、どうです。しかし、この鞄、小さいくせにずいぶん重いなあ。なにがはってるんです。」

「貴重品ばかり。」と千代乃は笑った。

散歩のようなぶらぶら歩きだった。西空は靄深くて、夕陽が赤い盆のように見えた。堤防の斜面には、雑草の小さな花が点々と咲いていた。人けの見えない大きな船が、河の真中を滑るように下っていった。

堤防が低くなり、樹木の茂った丘の麓道となり、河沿いに大きく迂回すると、すぐそこに、目指す家が、ひっそりと静まり返っていた。

田舎娘らしい女中が出て来、次にお上さんらしいひとが出て来て、二人は二階の奥に通された。簡素に出来てる室で、床の間の山水の軸物の前に、菊の花が活けてあった。

腰高の壁の硝子戸を開くと、道を距てて、びっくりするほど近く眼の下に、河が流れていた。河幅は広く、その先も河床の広い草地で、向うに高い堤防があった。夕陽はもう靄に隠れたらしかったが、河の面にはまだちらちら光りが浮いていた。

大雨で水が出たら、この家、どうするのだろう。そのような思いがする場所である。