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おんなごころしゅうい

女心拾遺

矢田 津世子

「文学界」1936(昭和11)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,514 字 · 36 页

青空文庫

けれど、不思議に眼だけがおしもの体を離れようとはせず、知らず知らずに八つ口から入った手が萎びたわが乳房を探り、骨々したわが胸を撫でてみる。そして、「老齢には勝てない」としみじみ自分へ云いきかせ、諦めさせようとするのだが、眼の前の活々としたおしもの体へ視線がいくと、不意に激しい妬心が頭をもたげてきて、それを圧し殺そうとする心から、夫人は常よりも穏やかな口調で、

「ほれ、そこに塵が残っていますよ。もういちど拭きなおして下さい」

と廊下を指さしてみせる。

おしもは畏まって、丸々と肥えた膝頭をついて、大きな乳房をゆさぶりながら熱中して拭きにかかる。そんな動作をくりかえさせながら、夫人の眼ざしは執拗におしもの体を離れない。どこまで、この妬心に耐え得られるかと、まるで、自分を試しているようである。

おしもは多分に神経の間のびた呆んやり者で、ただ、主人大事に豆々しく働いているのが取り得の女であった。一昨年世話する人があって福島在から奉公に上ったのだが、土臭い山だしの小娘も、今では、どうやら作法というようなことを一通り身につけて、客の前へ出されても恥をかかないまでになった。