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じょせいのれきし

女性の歴史

宮本 百合子

文学にそって

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,758 字 · 43 页

青空文庫

女性は美しければ美しいほど人質として悲惨だった。人質としてとられ、又媾和的なおくりものとして結婚させられる。戦国時代の婦人達の愛情とか人間性というものがどんなにふみにじられたかということは細川忠興の妻ガラシアの悲壮な生涯の終りを見てもわかる。明智光秀の三女であったおたまの方はキリスト教を信仰してガラシアという洗礼名をもっていた。石田三成が大阪城によって、徳川家康に反抗しようとしたとき、徳川の側に立っていた細川忠興の妻であり、秀吉によって実家の一族を滅された光秀の娘であるガラシアは、大阪城へ入城を強要されたのを拒んで、屋しきに火をかけて、老臣に自分を刺させて死んだ。三十六歳の短い生涯の間に、おたまの方は、武門の女の人生の苦痛を味わいつくして、その生をとじたのであった。

この時代には文学の創造者としての婦人は存在し得なくなった。この時代の特色ある文学として現れた謡曲の中に婦人は描かれるが、それは例えていえば物狂い――気狂いとか、愛情の絆によって、生きながら生霊となり、また死んでも霊となって現れるような、切ない女の心に表現されている。当時の婦人はどんなに自分達の希望を殺して生きていたか、また殺させているという暗黙の恐怖が男たちの意識の底を流れていたかが解る。