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じょなん
女難
国木田 独歩
「文藝界」1903(明治36)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页
そのうち、売卜者から女難のことを言われ、母からは女難ということの講釈を聞かされましたので、子供心にも、もしか今のが女難ではあるまいかと、ひどくこわくなりましたが、母の前では顔にも出さず、ないない心を痛めていながらも時々おさよのもとに遊びに参りましたのでございます。
今から思いますと、やはりそのころ私はおさよを慕うていたに違いないのです、おさよが私を抱いて赤児扱いにするのを私は表面で嫌がりながら内々はうれしく思い、その温たかな柔らかい肌で押しつけられた時の心持は今でも忘れないのでございます。女難といえばその時もう女難に罹っていたといってもよろしゅうございましょう。
母は毎日のように、女はこわいものだという講釈をして聴かし、いろいろと昔の人のことや、城下の若い者の身の上などを例えに引いて話すのでございます。安珍清姫のことまで例えに引きました。外面如菩薩内心如夜叉などいう文句は耳にたこのできるほど聞かされまして、なんでも若い女と見たら鬼か蛇のように思うがよい、親切らしいことを女が言うのは皆な欺ますので、うかとその口に乗ろうものならすぐ大難に罹りますぞよというのが母の口癖でありましたのでございます。