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ようえい
妖影
大倉 燁子
「オール読物」文芸春秋、1934(昭和11)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,489 字 · 22 页
部屋には鍵がかかっている。というのでまず第一に迎えに来てくれた同僚が心配をしはじめた。事務長に頼んで合鍵で開けてみると、室内は少しも取り乱されていないが、肝心の私の姿はどこにもない。どうも不思議だ。そこで船員達は手分けして船中隈なく探すことになったがやはり見つからない。勿論上陸していない証拠には荷物だってそのままに残っている。事によったら殺されたのじゃあるまいか、殺されて海中に投げ込まれたのかも知れない。などと云い出すものもあって、急に大騒ぎになった。
軈て水夫の一人が船底に近い物置部屋で私を発見したのだった。
私はそこで毛布に包まれて、死んだようになって眠っていた。
揺り動かされてもなかなか眼を開けなかった。が、軈て船員達や出迎えに来てくれた同僚の顔が段々判然と見えてきて意識を回復すると、急いで胴中に手をやった。そして愕然とした。
私は皆が止めるのもきかないで夢中で飛び起き、物置部屋を出たが、どこに自分の部屋があったのか見当さえもつかなくなった。
私はボーイに案内してもらって、自分の室へ入ると急いで中から鍵をかけた。
洋服を脱ぎ胴巻をとって改めて見たが、大切な暗号はどこにもない。