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おばけのこえ
妖怪談義
柳田 国男
柳田国男『妖怪談義』。同一底本的分册已合并为一书。收入:おばけの声、かはたれ時、幻覚の実験。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,618 字 · 16 页
もし私ぐらいしか天体の知識をもたぬ人ばかりが、あの時私の兄の家にいたなら結果はどうであったろうか。少年の真剣は顔つきからでもすぐにわかる。不思議は世の中にないとはいえぬと、考えただけでもこれをまに受けて、かつて茨城県の一隅に日中の星が見えたということが、語り伝えられぬとも限らぬのである。その上に多くの奇瑞には、もう少し共通の誘因があった。黙って私が石の祠の戸を開き、又は土中の光る物を拾い上げて、独りで感動したような場合ばかりではなかったのである。信州では千国の源長寺が廃寺になった際に、村に日頃から馬鹿者扱いにされていた一人の少年が、八丁のはばという崖の端を遠く眺めて、「あれ羅漢さまが揃って泣いている」といった。それを村の衆は一人も見ることができなかったにもかかわらず、さてはお寺から外へ預けられる諸仏像が、ここへ出て悲歎したまうかと解して、深い感動を受けて今に語り伝えている。あるいは又松尾の部落の山畑に、壻と二人で畑打をしていた一老翁は、不意に前方のヒシ(崖)の上に、見事なお曼陀羅の懸かったのを見て、「やれ有難や松※尾の薬師」と叫んだ。その一言で壻は何物をも見なかったのだけれども、たちまちこの崖の端に今ある薬師堂が建立せられることになった。