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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

五

五

ぬれたような黒土の上に点々とみどりが散らばっている。秋まきのえんどうが冬をしのいできた姿をそのまま、ちぢこまって、みどりの色もまだ沈んでいるその姿だった。霜柱ものこっている春寒むのおもては雀でさえも首をすくめているように見える。胸をまるくふくらませて、二羽だった。夫婦だか親子だか一羽が先に立ってちょんちょんととんで歩くあとから、同じようにちょんちょんと、も一羽がついてゆく。思い思いに背を向けあった形で土の上をあさっているかと思うと、急に並んで向きあって何かささやき交すような格好をしたり、かと思うとぱっととび立って庭木の繁みにかくれたりする。動いているのは雀だけというような、しずかな朝だった。雀はいつのまにか五羽になって、えんどうのある家庭菜園の上をとび回っている。みんな赤ん坊のように思える無邪気な雀たちのむつみあう姿を、日向縁の硝子戸ごしに眺めているミネの顔はしかし、朝とも思えぬ疲れをあらわにしていた。昨夜おそかったのだ。

「顔、洗っておいでよ。」

自分は今すましたばかりのすがすがしい顔で悠吉が近づいてきた。夜をろくにねむらずに仕事をしたあとの妻をいたわる調子である。