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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
「ほんとね。」といい、はっはっと声をあげて笑った。
妻の座を自分の手で投げすてた貞子はのびのびとして見える。しかも貞子の場合、独身者にみられる中性的なものはみじんもなく、やっぱり人の妻であり、人の子の母であるなごやかさゆたかさにみちていた。今は妻ではなくても、子をうみ、育てている女の人間的自信が彼女にこの安定感を与えているにしろ、夫と別れたことで女がのびのびとするのは何だろうか。経済力もその最も大きな原因であるだろうし、彼女の強い性格も、女としての彼女に輝きを増させているのだろう。表に現れて感じさせるものは堂々さや強引さではなく、女のゆたかさだけである。そんな貞子をミネはつくづくと羨ましく思う。かといって自分に貞子の真似が出来ようとも、またしようとも思いはしないが、妻の座にあいそをつかしてとび出した貞子の勇気には感心する。
「ね、だれでもあなたを羨ましがるわね。」
「ええ。」
「すべての女にあなたのような謀反気があったら、男はぎゃふんだけれど、そして面白いんだけれど、そうはゆかないわね。」
「へえへえ。」
いいたいことを聞こうというように貞子はにこにこする。