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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
ミネの家へも野村は平気な顔でくるし、ミネもまた野村の所の集りだと、尚更出かけるような努力を払った。出来るだけ多く野村と顔を合せることでお互いのうけたいやな思いから解放されるような、そんな期待があったのである。そして本当にそれはミネの心にかえってきた。
「野村さん、とてもうれしそうだったわね。恋愛でもしてるみたいな顔してたわ。」
何のこだわりもなくそれが、ミネの口から出たのである。貞子の家での集りで、珍らしく覇気にみちた野村の声をきき、珍らしく湧き上るような笑顔をみたからである。そしてあとに残ったミネは貞子にそれをいった。
「そうだった? そういえばそうね。」
貞子はふりかえってたしかめてみるような返事をした。
「そうよ、きっといいことがあるのよ。」
そうはいったがミネは、自分だけが特別に野村を観察していたような気がして、ちょっとてれた。しかし、たしかに野村はうきうきしていたのだ。それは閑子との縁談が決った当時の野村を思い出させさえした。それにしても勘のよい貞子がそれを感じないところをみると、やはり思いすごしだろうかとミネはまだそんなことにこだわる自分を変だと思ったりしたが、やはりその予感に近いニュースが、それからまもなく貞子から伝わってきた。