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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

やはり閑子をあわれんでいるからなのだろうか。

田圃を突っきると、道はこちらの丘の家々の間に分れる。ここにもまた沈丁花は夕靄のようにただよっていた。その生垣にそって歩きながら、ミネは涙をおさめた。そして帰るなり悠吉の部屋にゆき、かかとを立てて火鉢のそばに膝をついた。

「ニュース。野村さん、結婚するんだってよ。」

「ふーん。」

「こんどは恋愛だってよ。」

「へえっ。」

悠吉がほんとにしてこちらを向いたので、思わずミネは笑った。そしてふと考えたのは、あの年になればたやすく恋愛もできず、やはり他人にさがし出してもらうしかなかったことだった。イビキの問題がミネの頭の中を走った。

「女の側も、こんな風に運ぶといいんだけどね。」

ミネは野村のあのうきうきさに比べて、いんうつをすっかり性格の中へ沈めてしまった閑子に、女の立場の不利のようなものを感じないでいられなかった。ほんとにあの当時閑子が腹立てていったように、男の方は別れればその場から身軽になれるのに、女はいつまでもそれを引きずってゆかねばならぬ。着物を着かえたようなさっぱりとした気持に女がなるまでには、さまざまな苦悩の関所をゆきつ戻りつしなければならないのだ。