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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

くよくよしたり、じりじりしたり、泣いたりおこったり、そしてようやくゆきつき先が見通せたとはいえ、そこへさえも、うなだれ勝ちにしか足が運べない有様だった。こんなにも重荷になろうとは考えられもしなかった。しかし、目を一たびそとへ向ければ、現実の社会の動きはとうとうと流れる大河のように、塵も芥ものみこんだままゆきつく方向へと流れている。その流れの行き方を伝えて、日々の新聞はミネの心をゆすぶりつづけた。働く者たちの目ざめてゆくさまがとびこんでくる。電産のスト、全逓の二十四時間スト指令、私鉄の動きなど若木のようにぐんぐんのびてゆくその勢いのようなものが、じっとしているミネにさえ感じられた。ことに心ひかれるのが東宝映画の争議だった。同じ文化の担い手である親近感は、生きて動いている人たちの息吹きが熱く頬にかかってくるような思いがした。野村の結婚披露の当日は、それまでなかなか動かなかった「東急」「小田急」の私鉄がいよいよサボに入ったため、その二つのどちらかを利用せねば東京へ出られぬ筈の野村の困惑のさまが思いやられた。しかしそれは、ただの困惑ではない筈だった。何となくしてやられたことを喜ぶものがあって、新郎新婦のいない披露宴のことが妙にたのしく気が軽かった。