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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
「だめね。」
「だめよ。」
そんなふうに決定的な言葉を貞子と交したりしたが、貞子もやはり、してやられたことの方へ大きな関心をもっていた。昼頃、野村から中止のむねの電報がきた。ミネは却ってほっとするもののあるのに気づいた。心に残る一抹のかげりが、こんなことで消しとられたことは有りがたかった。そして何となく野村夫婦とうまくゆきそうに思えて、この自然のなり行きに感謝する心が大きかった。何にもしらぬ閑子は千枝の家から帰ってきて、もういつでも帰国のできる用意をした。四月の終りだった。
第十九回メーデーは文化の面の著しい進出を前ぶれにして、労働者と文化人の固い結びつきのもとで行われようとしていた。東宝争議なども幅ひろく訴えかけられるものがあったにちがいない。ミネもじっとしていられなかった。そして悠吉や貞子たちと一しょに弁当をもって出かけた。まだ十分に健康をとり戻していない皮膚の色は、一まつの不安を感じさせもしたが近くに住んでいる評論家の原口が病身ながら身軽な格好で誘いにきたのをみると、ミネの不安はけしとんでしまった。遠足にゆく小学生のようにみんなうきうきして出かけた。