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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
ならなかった。みんな悪い顔はしなかった。そうしてようやく割りこんだところは、でこぼこの地面で、松の木につかまってからだをまげて、次に通る人をよけねばならぬ場所だった。足もとのクローバーがふみにじられて、うでた菜っぱのようになっている。その上に新聞紙をひろげて、みんなは時のくるのを待っていた。みわたすと、いる、いる。婦人団体も、ジャーナリストの組合も、映画演劇も、教育関係者も、画家も作家も、そして白線の帽子や角帽の集団もいる。ミネのように夫婦できている幾組かの顔が見える。貞子のように母子できている幾組かの顔も見える。小さな子供づれの詩人の一家もいる。夫婦、親子がそれぞれ別々の団体に分れて加わっている組もあった。悠吉に肩をつっつかれてふりかえるとうしろに野村が立っている。
「奥さんだよ。」
と、悠吉がいう。ミネは不意をつかれてどぎまぎしたが、すぐ立ち直っておじぎをした。悠吉や貞子たちはもう挨拶をしたあとだった。野村の妻は微笑を含んで、しずかに頭を下げた。注視をあびているのを意識したつつましさだった。黒いズボンの上に白い毛糸のセーターをきた小柄な女だった。