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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
「ひどくこらしたんですね。もしよかったら一日うちへ寄こしてみたらどうでしょう。近所にいいあんまがありますから。」
すると、野村は急に笑顔になり、気弱くそれを消しながら、
「そうですか、じゃあ早そくそうしましょう。」
ひどくほっとした様子だった。野村を真中にして、めったにくることのないその通りを一つ先の停留所まで本屋などをのぞいたりしながら、三人は肩をならべて歩いた。それきり閑子の噂は出なかった。そして翌日、お昼前閑子はやってきた。結婚以来、はじめてみる明るい顔だった。
「二晩泊りできたのよ。」
子供のように嬉しそうだった。前日申込んであったので、あんまは約束通り一時にやってきた。あんまが終っても閑子は起き上ろうとはせず、夜についで眠りつづけた。大きないびきをかいて眠っている。その枕元へミネが立っても知らずに寝ていた。髪を枕の外へ波打たせて、軽く口を開けて眠りほうけている姿、色の白くない、大きな顔、早や白髪の交った赤茶気た髪、そして、いびきをかいて眠っている。みていてミネは辛くなった。
「叔母ちゃん、ひどく疲れてんのね。いびきかいてる。」
ミネの娘の正子までが、思いやりをこめた目で眺めた。