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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
永い獄中生活から解放された夫を迎えて、夫婦ともどもに急激な生活の異変の中で、活気にみちた日々を暮しているのを、今のミネは、個人的な近さでは見ることができなくさえなっている。刑務所の夫に面会にいった帰りを千恵子はよくミネの家へきて泊った。防空頭巾にモンペをつけ、一合の米の袋に一切れの牛肉、一個のリンゴの土産をもったいぶって差出せたような辛い時代、はげしさをうちに沈めているような千恵子は、ミネにさえも甘えたような気安さで接してきた。
「ああ、あ、どう? ミネさん。」
千恵子はミネの肩に両手をかけ、疲れをそのまま疲れとしてさらけ出していた。ミネの家へくるのを藪入りだといって、くるなり帯をとき、足袋をぬぎ、紺サージの前掛をしめて、度の強い近眼のめがねまではずしてしまう姿を、ミネは単純に喜んで、彼女のために力一ぱいのもてなしをした。ここでは気を許しているのではないかと思い、嘘やかくしのない心を見せあった。
「高木ったら、もう一年もしない中に出てくる算段ばかりしてるのよ。帰ってきたら私、あわてちゃうわ。」
彼女は若妻のように無邪気に、輝く目をしていった。戦争のさ中に、これが治安維持法違反で無期を言い渡され、近く網走へおくられる夫と、その妻の確信をもっていう言葉だったのである。