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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
無分別とは何だろう? 死のうとでもいうのか。馬鹿な。しかしこの手紙は嘘ではない。――閑子さんはよくしてくれます。よくしてくれればくれるほど私はくるしい。悪い結果によって起る私一家の打撃(子供たちはようやくおちつきをとり戻したところですから)を考えると私が何とかなればいいのだと思いまた勇気を出してみますが、またはね返されてしまいます。――
ミネは恥かしめをうけているような気がして、思わず立ち上った。そしてのしかかってくるものをふり払うように足早に歩いた。歩きながら、心は手紙の一句一句をくりかえしている。全責任を野村は負うという。それはどういうことなのだろう。全責任をおう。それならだまってがまんするとでもいうのか。ちがう。野村は一刻も早く、閑子からのがれたいのだ。責任をひとりで負うなんて。責任というなら、それは何も野村一人にあるわけではない。ただミネが残念でたまらないのは、一度話がつまずいたとき、何故それをまた思いきり悪く後戻りさせたかということだった。あの時野村にしろミネにしろ、今日の予感が全然なかったとはいえない。まちがっていたのだ。子供のためにといい、裁縫のできる女をという、当の野村の気持を全く棚上げにした彼の条件を、仲人を商売にする女のようにあてはめてしまったミネにも責任はないとはいえぬ。