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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

直接に相談もうけられない馬鹿な女なのか。負けだよ、負けだよ。なんにも男の心をひくものがなかったというのは。四十までも独りでいて、何のまちがいもなかったことを、お前は自慢にしていたかもしれない。しかしそれは、女として大きな不足があったのだということを、お前はしらないのだろう。何にもしらずに、夫婦とはこんなものだと思っているなら、とんでもない、それをくだらないと気がつかないのか頓痴気め!

いつかミネは野村の家へゆく電車にのっていた。野村の家に近づくにつれ、今、大なたをふるって、たち切ろうとしているものへ身ぶるいを感じた。ことによれば、見せなければならない手紙、閑子はどんな顔をするだろう。少しは感づいているかも知れない。ふところに手をやると、手紙は帯の下でかさばっている。それは野村から渡された苦悩のバトンなのだ。私はこれをできるだけの知恵をしぼって、小さな川に流してしまおう。私が利口にならなくちゃ、だから私はもう、決して涙など流しちゃならない。ミネはひとりで自分の心に力んでみせた。だが、野村の家の垣根のきわにうずくまっている閑子の手拭をかぶった姿をみつけると、急にやさしい声をかけずにいられなかった。