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めいご
姪子
伊藤 左千夫
「アララギ」1909(明治42)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,570 字 · 12 页
ほうしなどがそろそろ鳴き出してくる、まだ熱くなるまでには、余程の間があると思って、急に思いついて姪子の処へ往った。
お町が家は、松尾の東はずれでな、往来から岡の方へ余程経上って、小高い所にあるから一寸見ても涼しそうな家さ、おれがいくとお町は二つの小牛を庭の柿の木の蔭へ繋いで、十になる惣領を相手に、腰巻一つになって小牛を洗ってる、刈立ての青草を籠に一ぱい小牛に当てがって、母子がさも楽しそうに黒白斑の方のやつを洗ってやってる、小牛は背中を洗って貰って平気に草を食ってる、惣領が長い柄の柄杓で水を牛の背にかける、母親が縄たわしで頻りに小摺ってやる、白い手拭を間深かに冠って、おれのいったのも気がつかずにやってる、表手の庭の方には、白らげ麦や金時大角豆などが庭一面に拡げて隙間もなく干してある、一目見てお町が家も此頃は都合がえいなと思うと、おれもおのずと気も引立って、ちっと手伝おうかと声をかけた。
あらア荒場の伯父さんだよって、母子が一所にそういって、小牛洗いはそこそこにさすが親身の挨拶は無造作なところに、云われないなつかしさが嬉しい、まア伯父さんこんな形では御挨拶も出来ない、どうぞまア足を洗って下さい、そういうより早く水を汲んでくれる、おれはそこまで来たから一寸寄った