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ごらくろん

娯楽論

戸坂 潤

民衆と娯楽・その積極性と社会性・

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,484 字 · 29 页

青空文庫

娯楽が近代庶民的な卑近さを有っているに反して、幸福は云わば超歴史的なモラルのアプリオリのようにさえ見える。つまり幸福というものは人生の一つの要請であって、それを想定しなければ話しにならぬが、そうかと云ってそれを想定したからと云って話しが実際に片づくものでもないのである。だから実際幸福という観念は往々にしてロマン派的なものであったり(メーテルリンクの『青い鳥』)象徴派的なものであったりする(A・ジードの『エル・ハジ』の如き)のだ。それが多少理論的な形をとると、理想主義的なものであったり観念論的・精神主義的・乃至神学的・なものであったり、そうでなくても高々精神医学的な処方や説教に類似している他ない。ヒルティの『幸福論』などがこうした最後のものの典型である(R・ケーベルはヒルティに対して深い同情を示している――『論文集』第二巻を見よ。そしてケーベルが文学の最も大きな役割の一つを教慰とでも云うべきもの――エヤバウウンク――に見出していることは面白い。教慰と娯楽との関係に就いては後に)。

ヒルティの幸福論の最初の一篇は、幸福というものが労働の内にしか見出せないという説明を以て始まる。