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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

を得るも菱華は独り妾が妝前の愁眉を照さざる殆ど稀なり」という文体である。私というところが男のとおり「余」と書かれている。そして、こういう漢文調の論文の終りには細かな活字で、アリストートルの詩の句が英語で引用されているのである。

開化期の文学は混沌としていて、仮名垣魯文のように江戸軟文学の脈を引いて、揶揄的に文明開化の世相風俗を描いた作者がある。その一方では「佳人之奇遇」などのように、進歩の理想を漢文調で表現した政治小説翻訳作品があり、中島湘煙のようなひとは、後の部に近くあったのだろうと思われる。

当時の教養の伝統が、こんな矛盾を湘煙にもたらしたということもあるけれども、その士族的な教養そのものが示しているとおり、当時の男女同権論者にしろ、女権のための運動家たちにしろ、その主体は一部の上流的な有識男女の間にとどまっていたのだということを、沁々考えさせる。

さもなければ、湘煙がどうしてああいうむつかしい文体で文章を書いて納っていられただろう。もしも、日本の女のおくれた生活というものが、あちこちの露路、そちこちの村で営まれている日々の生活のままに湘煙の心に映っていたのならば、彼女もおそらくはそれらの女性への同情からだけでも、「濃妝をもつて妾が啼痕を」