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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
は、当時にあってたしかにそのまとまりのよさでも頭角をぬいた作品であったろう。全体の筋も割合に自然だし人間の感情も日常の常識のなか、その範囲ではリアルである。「藪の鶯」の世界は一種新時代との歩調を合わせ妥協していることも、若い作者花圃の人生態度の分別のよさとともに、まぎれもなく当時指導的な思想として、日本に擡頭しつつあった国粋主義の考えの一応のまとまりを反映しているのである。
「藪の鶯」の作者が、やがて、当時政教社をおこして『日本人』を発刊しはじめた雪嶺三宅雄二郎と結婚した内的必然もこの作をよめばうなずける。「どもりはかわゆい」と思ったなどという角度で雪嶺を語るのは花圃の性格或は風格であって、内的な相似は更に深くこの二人の男女の歴史性のうちにひそめられていた。今日七十を何歳か超え、中野正剛を愛婿の一人とする花圃の生きかたは、決して偶然ではなく、「藪の鶯」一巻のうちに、その展開のいとぐちを含んでいた。「藪の鶯」という題は、稚き初音という作者のこころであったろうが、一声の初音は、初音ながらも、客観的にみれば明治になっても決して野放しのまま生の愉悦にふるえた喉一杯の初音ではなかった。