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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

花圃の世話で『都の花』に「うもれ木」がのったのは、その二十五年の十一月。その原稿料は十一円七十五銭、一枚が二十五銭であった。それがきっかけとなって十二月に「暁月夜」をのせ、その稿料が入ったので、のどかな年越しをしたとかかれている。それを金額にすれば十一円四十銭也であった。

萩の舎門下の二才媛とうたわれた一人の花圃は二十五年の秋に三宅雪嶺と結婚した。「近日鬼界ヶ島へわたるから」と花圃は諧謔的に云っているけれど、桃水との交際も断った一葉の当時の心持は単純ではなかったろう。その夏に、旧父の在世の頃一葉の聟にという話があって、殆どまとまっていたのを父の歿後利害関係のいきさつでその話はこわれていた渋谷某という男が、一葉を訪ねて来たことがあった。とりたててどうというところもない青年だったのが、今は検事試験に及第して正八位、月俸五十円。二十円が百円以上のねうちのあったその頃は、金時計など胸にかけ、もう一度昔の話のよりを戻したげな親しみをみせた。小説出版の費用を出してよいとも云う。しかし一葉の心の中には、その男が憎いのでもないし、我慢の意地をはるというでもなくて、「今にして此人に靡きしたがはん事なさじ」