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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
と詠んでいる。
二月に門人の花圃が歌塾をひらくことをきいた。中島歌子は一葉にもしきりにすすめて、いかでこの折すごさず世に名を出し給はずや、と一葉の心を誘い立てている。
この月に一葉が「花ごもり」を書きはじめていることは、私たちの関心をひく点である。七月号の文学界にのったこの「花ごもり」は、一葉の小説としてはじめて性格らしい性格をもったお近という五十女が描き出されているばかりでなく、余蘊なくリアルにうつされているそのお近の世道観、処世哲学というものは、よくもわるくも浮世はこうしたものという腰の据えかたに徹したものである。お近のモラルはこうかかれている。「親子夫婦むつまじきを人間上乗の楽しみといふは、外に求むることなく我に足りたる人の言の葉ぞかし。心は彼の岸をと願ひて中流に棹さす舟の、よる辺なくして波にたゞよふ苦しさはいかばかりぞ。」「今の心いさゝかは屑よからずとも、小を捨てゝ大につくは恥とすべきにも非ず。」「陋劣しきことゝ誹るは誹る者の心浅きにて、男一疋なにほどの疵かはつかん。草がくれ拳を握る意久地なさよりも、ふむべき為のかけはしに便りて、をゝしく、たけく、栄ある働を浮世の舞台にあらはすこそ面白けれ。