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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
偽はまことか、まことはうそかと、誇張をも顧慮せず燃え立つなりに自我を燃え立たそうと意欲し、その主情的な主張において、分裂矛盾のままに自身のロマンティシズムを立てていたのだと考えられる。
この自然発生的で又現世的匂いのきつい鉄幹のロマンティシズムが、泉州堺の菓子屋の娘であった鳳晶子の才能に働きかけ、それをひきつけ、目ざまして行った過程は、鉄幹、晶子の夥しい作歌のうちに色彩濃く描きつくされているのである。
鉄幹は京都の生れだが、晶子は堺の町の沒落しかけている羊羹屋に、三人めの娘として明治十一年十二月、歓迎されない誕生をした。父親が娘を可愛がる通例とちがって、晶子は父から邪魔もののようにうとんぜられ、勝気な母は弟や妹の世話を彼女にまかせ、家のために青春をとざされ過した。堺の町にたった二冊だけ入る『文学界』のうちその一冊はこのとざされた生活の晶子が購読者であった。やがて『明星』が一冊六銭、当時のタバコのピンヘット一箱の代で発行されたとき、晶子はこの新詩社の運動に激しくひかれて、上京した。明治三十四年といえば晶子は二十三歳の年で、その秋に鉄幹と恋愛を通して結婚した。