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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

『みだれ髪』はその年に出版された。

夜の帳にささめき尽きし星の今を

下界の人の鬢のほつれよ

歌にきけな誰れ野の花に紅き否む

おもむきあるかな春罪もつ子

髪五尺ときなば水にやはらかき

少女ごころは秘めて放たじ

「早熟の少女が早口にものいふ如き歌風であるけれども」と後年斎藤茂吉が評しているこのリズムが、当時にあって、どれほど新鮮な感動を与えたか。おそらく今日想像の及ばないほどつよく烈しく芳しい新風であったのだろう。

やは肌のあつき血潮にふれも見で

さびしからずや道を説く君

恋を知らでわれ美を神にもとめにき

君に今日みる天の美地の美

ここにはただ女の恋のよろこびの歌のひとふしがあるばかりでなく、『文学界』のロマンティシズムがもたなかった肉体の愛の表現の肯定が、活々と脈うっていることに注目をひかれる。

封建の風をつたえて、紅葉などでも作家が自分の恋愛の問題を文学に扱うのを、人の前に恥をさらすと云っていたような時代。そして、吉原での痴戯は憚らず描かれているが、恋とはとりも直さず痴情としてみられていた時代、『文学界』の若きロマンティストたちは泰西の愛についての考えかたを主張し、封建風な低い痴れごとの観念に対抗して、男女の間にあり得るダンテ的な愛の境地を強調した。