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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
四十
主税はようよう、それも唾が乾くか、かすれた声で、
「三世相を見ておりましたのは、何も、そんな、そんな訳じゃございません……」とだけで後が続かぬ。
「翻訳でも頼まれたか、前世は牛だとか、午だとか。」
と串戯のような警抜な詰問が出たので、いささか言が引立って、
「いいえ、実はその何でございまして。その、この間中から、お嬢さんの御縁談がはじまっております、と聞きましたもんですから、」
小芳はそっと酒井を見た。この間でも初に聞いた、お妙の縁談と云うのを珍らしそうに。
「ははあ、じゃ何か、妙と、河野英吉との相性を検べたのかい。」
果せる哉、礼之進が運動で、先生は早や平家の公達を御存じ、と主税は、折柄も、我身も忘れて、
「はい、」と云って、思わず先生の顔を見ると、瞼が颯と暗くなるまで、眉の根がじりりと寄って、
「大きに、お世話だ。酒井俊蔵と云う父親と、歴然とした、謹(夫人の名。)と云う母親が附いている妙の縁談を、門附風情が何を知って、周章なさんな。
僭上だよ、無礼だよ、罰当り!
お前が、男世帯をして、いや、菜が不味いとか、女中が焼豆腐ばかり食わせるとか愚痴った、と云って、可いか、この間持って行った重詰なんざ、妙が独活を切って、奥さんが煮たんだ。