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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

」

とお妙は口惜しそうに、あわれや、うるみ声して云った。

二人密と目を合せて、苦々しげに教頭が、

「あえてそういう探索をする必要は無いですがね、よしんば何事も措いて問わんとして、少くとも攫徒に同情したに違いない、そうだろう。」

「そりゃあの男の主義かも知れんよ。」

「主義、危険極まる主義だ。で、要するにです、酒井さん。ああいう者と交際をなさるというと、先ず貴嬢の名誉、続いてはこの学校の名誉に係りますから、以来、口なんぞ利いてはなりません。宜しいかね。危険だから近寄らんようになさい、何をするか分らんから、あんな奴は。」

お妙は気を張つめんと勤むるごとく、熟と瞶る地図を的に、目をって、先刻からどんなに堪えたろう。得忍ばず涙ぐむと、もうはらはらと露になって、紫の包にこぼれた。あわれ主税をして見せしめば、ために命も惜むまじ。

五十一

いや、学士二人驚いた事。

「貴娘、どうしたんだ。」

と教頭が椅子から突立った時は、お妙は始からしっかり握った袂をそのまま、白羽二重の肌襦袢の筒袖の肱を円く、本の包に袖を重ねて、肩をせめて揉込むばかり顔を伏せて、声は立てずに泣くのであった。