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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「でも、何でしょう、貴下は、やっぱり、個人主義でおいでなさるんでしょう。」

「僕は饅頭主義で、番茶主義です。」

と、なぜか気競って云って、片手で饅頭を色気なくむしゃりと遣って、息も吐かずに、番茶を呷る。

「あれ、嘘ばっかり。貴下は柳橋主義の癖に、」

夫人は薄笑いの目をぱっちりと、睫毛を裂いたように黒目勝なので睨むようにした。

「ちょいと、吃驚して。……そら、御覧なさい、まだ驚かして上げる事があるわ。」

と振返りざまに背後向きに肩を捻じて、茶棚の上へ手を遣った、活溌な身動きに、下交の褄が辷った。

そのまま横坐りに見得もなく、長火鉢の横から肩を斜めに身を寄せて、翳すがごとく開いて見せたは……

「や! 読本を買いましたね。」

「先生、これは何て云うの?」

「冷評しては不可ませんな、商売道具を。」

「いいえ、真面目に、貴下がこの静岡で、独逸語の塾を開くと云うから、早いでしょう、もう買って来たの。いの一番のお弟子入よ。ちょいと、リイダアと云うのを、独逸では……」

「レエゼウッフ(読本)――月謝が出ますぜ。」

「レエゼウッフ。」

九

「あの、何?」

と真に打解けたものいいで、