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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

こりゃ世話をしたのが無理だった。め組怒っちゃ不可い。」

「分った……」

と唐突に膝を叩いて、

「旦那、てっきりそうだ、だから、私ア違えねえッて云ったんだ。彼奴、兇状持だ。」

「ええ―」

何としたか、主税、茶碗酒をふらりと持った手が、キチンと極る。

「兇状持え?」とお蔦も袖を抱いたのである。

め組は、どこか当なしに睨むように目を据えて、

「それを、私ア、私アそれをね、ウイ、ちゃんと知ってるんだ。知ってるもんだから、だもんだから。……」

九

「ウイ、だから私が出入っちゃ、どんな事で暴露ようも知れねえという肚だ。こっちあ台所までだから、ちっとも気がつかなかったが、先方じゃ奥から見懸けたもんだね。一昨日頃静岡から出て来たって、今も蔦ちゃんの話だっけ。

状あ見やがれ、もっと先から来ていたんだ。家風に合わねえも、近所の外聞もあるもんか、笑かしゃあがら。」

と大きに気勢う。

「何だ、何だ、兇状とは。」

「あの、河野さんの母様がかい。」

とお蔦も真顔で訝った。

「あれでなくって、兇状持は、誰なもんかね、」

「ほほほ、貴郎、真面目で聞くことはないんだわ。め組の云う兇状持なら、あの令夫人がああ見えて、内々大福餅がお好きだぐらいなもんですよ。