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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

嘘にもほんとうにも、児があらあ、児が。ああ、」

また一口がぶりと遣って、はりはりを噛んだ歯をすすって、

「ねえ、大勢小児がありましょう。」

「南町の学士先生もその一人、何でも兄弟は大勢ある。八九人かも知れないよ、いや、ほんとうなら驚いたな。」

「おお、待ちねえ、その先生は幾歳だね。」

「六か、七だ。」

「二十とだね、するとその上か、それとも下かね。どっち道その人じゃねえ。何でも馬丁の因果のたねは婦人なんだ。いずれ縁附いちゃいるだろうが、これほど確な事はねえ。私ア特別で心得てるんで、誰も知っちゃいますめえよ。知らぬは亭主ばかりなりじゃねえんだから、御存じは魚屋惣助(本名)ばかりなりだ。

はははは、下郎は口のさがねえもんだ。」

ぐいと唇を撫でた手で、ポカリと茶碗の蓋をした。

「危え、危え、冷かしに行くどころじゃねえ。鰒汁とこいつだけは、命がけでも留められねえんだから、あの人のお酌でも頂き兼ねねえ。軍医の奥さんにお手のもので、毒薬装られちゃ大変だ。だが、何だ、旦那も知らねえ顔でいておくんねえ、とかく町内に事なかれだからね。」

「ああ、お前ももうおいででない。」

「行くもんか、行けったってお断りだ。