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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
お断り、へへへ、お断り、」
と茶碗を捻くる。
「厭な人だよ。仕様がないね、さあ、茶碗をお出しなね。」
「おお、」
と何か考え込んだ、主税が急に顔を上げて、
「もうちっと精しくその話を聞かせないか。」
井戸端から、婦人の凧が切れて来たかと、お源が一文字に飛込んだ。
「旦、旦那様、あの、何が、あの、あのあの、」
矢車草
十
お源のその慌しさ、駈けて来た呼吸づかいと、早口の急込に真赤になりながら、直ぐに台所から居間を突切って、取次ぎに出る手廻しの、襷を外すのが膚を脱ぐような身悶えで、
「真砂町の、」
「や、先生か。」
真砂町と聞いただけで、主税は素直に突立ち上る。お蔦はさそくに身を躱して、ひらりと壁に附着いた。
「いえ、お嬢様でございます。」
「嬢的、お妙さんか。」
と謂うと斉しく、まだ酒のある茶碗を置いた塗盆を、飛上る足で蹴覆して、羽織の紐を引掴んで、横飛びに台所を消えようとして、
「赤いか、」
お蔦を見向いて面を撫でると、涼しい瞳で、それ見たかと云う目色で、
「誰が見ても……」と、ぐっと落着く。
「弱った。」と頭を圧える。
「朝湯々々、」と莞爾笑う。
「軍師なるかな、諸葛孔明。