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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

だけれども何が可いか、ちっとも分らないでしょう。粋な芸者衆だから、ハイカラなものは不可いでしょう。靴足袋も、手袋も、銀貨入も、そんなものじゃ仕方が無いから、これをね、私、極りが悪いけれども持って来ました。小母さんから上げて頂戴。」

「お喜びなさいよ、お嬢さんが、」

「まあ、」

と嬉しそうに頂くのを、小芳は見い見い、蒲団へ膝を乗懸けて、

「何を下すったい。」

「開けて見ても可いかね。」

「早く拝見おしなねえ。」

「あら! 見ちゃ可厭よ、酷いわ、小母さんは。」

と背中を推着いて、たった今まで味方に頼んだのを、もう目の敵にして、小突く。

お蔦は病気で気も弱って、

「遠慮しましょうかね、」と柔順しく膝の上へ大事に置く。

「ほんとうに、お蔦さんは羨しいわねえ。」

とさも羨しそうに小芳が云うと、お妙はフト打仰向いて、目を大きくして何か考えるようだったが、もう一つの袂から緋天鵝絨の小さな蝦蟇口を可愛らしく引出して、

「小母さん、これを上げましょう。怒っちゃ可厭よ。沢山あると可いけれど、大な銀貨(五十銭)が三個だけだわ。

先の紙入の時は、お紙幣が……そうねえ……あの、四円ばかりあったのに、この間落してねえ。