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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

と隔てなく、小芳の膝に手を置いて、

「小母さんでも可うござんす。構わないで家へいらっしゃいよ。玄関の書生さんは婦のお客様をじろじろ見るから極が悪かったら遠慮は無いわ、ずんずん庭の方からいらっしゃい。

私がね、直ぐに二階へ連れてって、上げるわ。そうするとねえ、母様がお酒を出すでしょう。私がお酌をして酔わせてよ。アハアハ笑って、ブンと響くような大な声を出したら、そしたらもう可いわ。

是非、主税さんを呼んで下さい。電報で――電報と云って頂戴、可くって。不可いとか何とか、父さんがそう云ったら、膝をつかまえて離さないの。そして、お蔦さんが寂しがって、こんなに煩らっていらっしゃると云って御覧なさい。あんなに可恐らしくっても、あわれな話だと直きに泣くんですもの、きっと承知するわ。

そのかわり、主税さんが帰って来たら、日曜に遊びに行くから、そうしたらば、あの……」

と蓐の端につかまって、お蔦の顔を覗くようにして、

「貴女も、私を可厭がらないで、一所に遊んで頂戴よ。前に飯田町に行きたくっても、貴女が隠れるから、どんなに遠慮だったか知れないわ。」

もう二人とも泣いていたが、お蔦は、はッと面を伏せた。