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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「しますと、あの方も御一所なんですか。」

「一所じゃないです。早瀬がああいう依怙地もんですで。半分馬鹿にしていて、孤児院の義捐なんざ賛成せんです。今日は会へも出んと云うそうで。それを是非説破して引張出すんだと云いましたから、今頃は盛に長紅舌を弄しておるでしょう、は、はは、」

と調子高に笑って、厭な顔をして、

「行って見て下さらんか。貴女、」

「はい、」

となぜか俯向いたが、姉夫人はそのまましとやかに別れの会釈。

「また逢違いになりませんように、それでは御飯を召食りかけた処を、失礼ですが、」

「いや、もう済んだです。」

その日は珍らしく理学士が玄関まで送って出た。

絹足袋の、静な畳ざわりには、客の来たのを心着かなかった鞠子の婢も、旦那様の踏みしだいて出る跫音に、ひょっこり台所から顔を見せる。

「今日は、」

と少し打傾いて、姉夫人が、物優しく声をかける。

「ひゃあ、」と打魂消て棒立ちになったは、出入りをする、貴婦人の、自分にこんな様子をしてくれるのは、ついぞ有った験が無いので。

車夫が門外から飛込んで来て駒下駄を直す。

「AB横町でしたかね。あすこへ廻りますから、」