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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「こんなものを持っていますから、こちらから、」

とまごつくお源に気の毒そう。ふっくりと優しく微笑み、

「お邪魔をしてね。」

「どういたしまして、もう台なしでございまして、」と雑巾を引掴んで、

「あれ、お召ものが、」

と云う内に、吾妻下駄が可愛く並んで、白足袋薄く、藤色の裾を捌いて、濃いお納戸地に、浅黄と赤で、撫子と水の繻珍の帯腰、向う屈みに水瓶へ、花菫の簪と、リボンの色が、蝶々の翼薄黄色に、ちらちらと先ず映って、矢車を挿込むと、五彩の露は一入である。

「ここに置かして頂戴よ。まあ、お酒の香がしてねえ、」と手を放すと、揺々となる矢車草より、薫ばかりも玉に染む、顔酔いて桃に似たり。

「御覧なさい、矢車が酔ってふらふらするわ。」と罪もなく莞爾する。

お源はどぎまぎ、

「ええ、酒屋の小僧が、ぞんざいだものでございますから。」

「ちょいと、溢したの。やっぱり悪戯な小僧さん? 犬にばっかり弄っているんでしょう、私ン許のも同一よ。」

一廉社会観のような口ぶり、説くがごとく言いながら、上に上って、片手にそれまで持っていた、紫の風呂敷包、真四角なのを差置いた。

「お裾が汚れます、お嬢様。