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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「さようなら!」

勢よく引返すと、早や門の外を轣轆として車が行く。

「暑い、暑い、どうも大変に暑いのね。」

菅子はもうそこに、袖を軽く坐っていたが、露の汗の悩ましげに、朱鷺色縮緬の上〆の端を寛めた、辺は昼顔の盛りのようで、明い部屋に白々地な、衣ばかりが冷しい蔭。

「久振だわね。」

「久振じゃないじゃありませんか。今の言種は何です、ありゃ。……姉さんにお気の毒で、傍で聞いていられやしない。」

「だって事実だもの。病院に入切で居ながら、いつの何時には、姉さんが誰と話をしたッて事、不残旦那様御存じなの、もう思召ったらないんですからね。

それでも大事にして置かないと、院長は家中の稼ぎ人で、すっかり経済を引受けてるんだわ。お庇様で一番末の妹の九ツになるのさえ、早や、ちゃんと嫁入支度が出来てるのよ。

道楽一ツするんじゃなし、ただ、姉さんを楽みにして働いているんですからね。ちっとでも怒らしちゃ大変なのだから、貴下も気をつけて下さらなくっちゃ困るわ。」

「何を云ってるんです、面白くもない。」

「今の様子ッたら何です、厭に御懇ね。そして肩を持つことね。油断もすきもなりはしない。