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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

主税もその扱にすれば、お嬢さんも晴がましく、顔の色とおなじような、毛巾を便にして、姿と一緒にひらひらと動かすと、畳に陽炎が燃えるようなり。

「御無沙汰を致しまして済みません。奥様もお変りがございませんで、結構でございます。先生は相変らず……飲酒りますか。」

「誰か、と同一ように……やっぱり……」と莞爾。落着かない坐りようをしているから、火鉢の角へ、力を入れて手を掛けながら、床の掛物に目を反らす。

主税は額に手を当てて、

「いや、恐縮。ですが今日のは、こりゃ逆上せますんですよ。前刻朝湯に参りました。」

「父様もね、やっぱり朝湯に酔うんですよ。不思議だわね。」

主税は胸を据えた体に、両膝にぴたりと手を置き、

「平に、奥様には御内分。貴女また、早瀬が朝湯に酔っていたなぞと、お話をなすっては不可ませんよ。」

「ほんとうに貴郎の半分でも、父様が母様の言うことを肯くと可いんだけれど、学校でも皆が評判をするんですもの、人が悪いのはね、私の事を(お酌さん。)なんて冷評すわ。」

「結構じゃありませんか。」

「厭だわ、私は。」

「だって、貴女、先生がお嬢さんのお酌で快く御酒を召食れば、それに越した事はありません。