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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「貴下は、まあ、さぞ東京へお帰りなさらなければならなかったんでございましょうに。あいにく御病気で、ほんとうに間が悪うございましたわね。酒井様からの電報は御覧になりましたの?」

「見ました、先刻はじめて、」

と調子が沈む。

「二通とも、」

「二通とも。」

「一通はただ(直ぐ帰れ。)ですが、二度目のには、ツタビョウキ(蔦病気)――かねて妹から承っておりました。貴下の奥さんが御危篤のように存じられます。御内の小使さん、とそれに草深の妹とも相談しまして、お枕許で、失礼ですが、電報の封を解きまして、私の名で、貴下がこのお熱の御様子で、残念ですがいらっしゃられない事を、お返事申して置きました。ですが、まあ、何という折が悪いのでございましょう。ほんとうにお察し申しております。」

「……病気が幸です。達者で居たって、どの面さげて、先生はじめ、顔が合されますもんですか。」

「なぜ? 貴下、」

と、熟と頤を据えて、俯向いて顔を見ると、早瀬はわずかに目を開いて、

「なぜとは?」

「…………」

「第一、貴女に、見せられる顔じゃありません。」

と云う呼吸づかいが荒くなって、毛布を乗出した、薄い胸の、露わな骨が動いた時、道子の肩もわなわなして、真白な手の戦くのが、雪の乱るるようであった。