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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

その、山の根を畝り、岩に躍り、渚に飜って、沖を高く中空に動けるは、我ここに天地の間に充満たり、何物の怪しき影ぞ、円なる太陽の光を蔽うやとて、大紅玉の悩める面を、拭い洗わんと、苛立ち、悶え、憤れる状があったが、日の午に近き頃には、まさにその力尽き、骨萎えて、また如何ともするあたわざる風情して、この流動せる大偉人は、波を伏せ※きを収めて、なよなよと拡げた蒼き綿のようになって、興津、江尻、清水をかけて、三保の岬、田子の浦、久能の浜に、音をも立てず倒れたのである。

一分たちまち欠け始めた、日の二時頃、何の落人か慌しき車の音。一町ばかりを絶えず続いて、轟々と田舎道を、清水港の方から久能山の方へ走らして通る、数八台。真前の車が河野大夫人富子で、次のが島山夫人菅子、続いたのが福井県参事官の新夫人辰子、これが三番目の妹で、その次に高島田に結ったのが、この夏さる工学士とまた縁談のある四番の操子で、五ツ目の車が絹子と云う、三五の妙齢。六台目にお妙が居た。

一所に東京へと云うのを……仔細あって……早瀬が留めて、清水港の海水浴に誘ったのである。

お妙の次を道子が乗った。