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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

と火鉢に凭掛る。

「じゃ当分謹慎だね。今夜なぞも、これから真直にお帰りだろう、どこへも廻りゃしますまいな。」

「うふふ、考えてるんだ。」とまた灰に棒を引く。

「相変らず辛抱が出来ないか。」

「うむ、何、そうでもない。母様が可愛がってくれるから、来ている間は内も愉快だよ。賑じゃあるし、料理が上手だからお菜も旨いし、君、昨夜は妹たちと一所に西洋料理を奢って貰った、僕は七皿喰った。ははは、」

と火箸をポンと灰に投て、仰向いて、頬杖ついて、片足を鳶になる。

「御馳走と云えば内へ来るめ組だが、」

皆まで聞かず、英吉は突放したように、

「ありゃ君、もう来なくッても可いよ。余り失礼な奴だと、母様が大変感情を害したからね、君から断ってくれたまえ。」

と真面目で云って、衣兜から手巾をそそくさ引張出し、口を拭いて、

「どうせ東京の魚だもの、誰のを買ったって新鮮いのは無い。たまに盤台の中で刎ねてると思や、蛆で蠢くか、そうでなければ比目魚の下に、手品の鰌が泳いでるんだと、母様がそう云ったっけ。」

め組が聞いたら、立処に汝の一命覚束ない、事を云って、けろりとして、

「静岡は口の奢った、旨いものを食う処さ。