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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

どこのか媒妁人した御縁女の贈物らしく、貰った時の移香を、今かく中古に草臥れても同一香の香水で、追かけ追かけ香わせてある持物を取出して、気になるほど爪の伸びた、湯が嫌らしい手に短い延の銀煙管、何か目出度い薄っぺらな彫のあるのを控えながら、先ず一ツ奥歯をスッと吸って、寛悠と構えた処は、生命保険の勧誘も出来そうに見えた。

甚だ突然でごわりまするが、酒井俊蔵氏令嬢の儀で……ごわりまして、とまたスッと歯せせりをする。

それ、えへん! と云えば灰吹と、諸礼躾方第一義に有るけれども、何にも御馳走をしない人に、たといが葱臭かろうが、干鱈の繊維が挟っていそうであろうが、お楊枝を、と云うは無礼に当る。

そこで、止むことを得ず、むずむずする口を堪える下から、直ぐに、スッとまたぞうろ風を入れて、でごわりまするに就いて、かような事は、余り正面から申入れまするよりと、考えることでごわりまする……と掻つまんで謂えば、自分はいまだ一面識も無いから、門生の主税から紹介をして貰いたいと言うのである。

南無三、橋は渡った、いつの間にか、お妙は試験済の合格になった。

今は表向に縁談を申込むばかりにしたらしい。