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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「降りろ――さあ、」

と一ツしゃくり附けると、革を離して、蹌踉と凭れかかる。半纏着にまた凭れ懸かるようになって、三人揉重なって、車掌台へ圧されて出ると、先から、がらりと扉を開けて、把手に手を置きながら、中を覗込んでいた運転手が、チリン無しにちょうどそこの停留所に車を留めた。

御嶽山を少し進んだ一ツ橋通を右に見る辺りで、この街鉄は、これから御承知のごとく東明館前を通って両国へ行くのである。

「少々お待ちを……」

と車掌も大事件の肩を掴まえているから、息急いて、四五人押込もうとする待合わせの乗組を制しながら、後退りに身を反らせて、曲者を釣身に出ると、両手を突張って礼之進も続いて、どたり。

後からぞろぞろと七八人、我勝ちに見物に飛出たのがある。事ありと見て、乗ろうとしたのもそのまま足を留めて、押取巻いた。二人ばかり婦も交って。

外へ、その人数を吐出したので、風が透いて、すっきり透明になって、行儀よく乗合の膝だけは揃いながら、思い思いに捻向いて、硝子戸から覗く中に、片足膝の上へ投げて、丁子巴の羽織の袖を組合わせて、茶のその中折を額深く、ふらふら坐眠りをしていたらしい人物は、酒井俊蔵であった。